連載 『進行がんを眠らせる』 その272

本書の執筆でもっとも苦慮したのは、科学の急速な進歩です。とにかく、執筆中にも新しい発見や治療法が現れたり、新しい理論が出てきたりするものですから、どこまで取り込むべきか判断に迷いました。最新の科学を志向して書いたつもりですが、読者の目に触れるときには、すでに旧聞になっているのかもしれません。しかし、むしろそれはありがたいことです。それくらい、科学の進歩はすさまじく速いのです。

ここであえて医学といわないのは、21世紀のがん治療は、総合的な科学の力によるところが大きいと考えるからです。医学はもとより、遺伝子工学、分子生物学、生化学、そして重粒子線を中心とした量子力学などの科学の総力戦になっていくことでしょう。

本書を手にしている読者の多くは、患者さんかそのご家族であると思われます。科学は今日不可能なことでも、明日には可能にしてくれるかもしれません。どうか希望の扉が少しずつ開いていることに気づいてください。

私が期待するのは、最新かつ最適な医療が少しでも早く患者さんの手元に届くことです。本書が、わずかでもがん患者さんの治療に役立つことを願ってやみません。

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