連載 『進行がんを眠らせる』 その271

私が若いころに学んだ理論物理学、たとえば、相対性理論や量子力学は、見たこともない宇宙の果てや時間の始まり、大きさがあるのかないのかわからないような粒子を理屈と理論で追いつめていく学問です。つねに仮定と推論があり、理論を積み重ね、実験や観測を通じて正当化していくものです。そして、物事を単純化し、理屈に合わないものを排除してシンプルにする、どちらかというと哲学に近い学問です。数式や計算は、それを証明する道具でしかありません。

がんの手術に立ち会ったこともない私が、抵抗もなくがんという病気を語れたのは、このような見たこともないものを考える学問を学んだことが背景にあったからに違いありません。

第2章の「遺伝子のふるまい」も、理論物理学的な視点から述べたものです。残念ながら、命をあつかう医学には理論医学というものは存在しませんから、医師や医学者が仮定でこのようなことを書いたら、たちまち誰にも相手にされなくなるでしょう。私のような立場だからこそ許されるものなのです。

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