コラム 『モミの木のあるべき姿』

的確な戦術-礎となる情報と意思

 

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12月17日、サッカークラブワールドカップ決勝戦が行われました。世界のトッププレイヤー達を擁する欧州チャンピオン、レアルマドリッドの華麗なプレイに加え、正面から果敢に挑み、堂々と2ゴールをもぎ取った鹿島アントラーズの活躍に胸をふるわせた方も多かったのではと思います。現地はもちろんTVで観戦しながら、多くの方が双方のチームの素晴らしいプレイに、惜しむことなくそして分け隔てなく、称賛の拍手、声援を送られていたことでしょう。わたしもそのうちのひとりです。

翌朝、まだ余韻に浸っているわたしの目と耳は、アントラーズの大健闘を称えるニュースを追います。強い精神力、技術の向上、いやそれだけではないはず・・・的確な戦術が構築され、全員が理解をしたうえで戦っていたと思います。 可能な限りの対戦チーム、プレイヤーひとりひとりの情報を集め、詳細に分析を重ね戦術を練り上げていたはず。当然と言えば当然なのですが、わたし達は、ついつい、情熱、気力という精神面だけにフォーカスしてしまいがちです。「精神面」が充実していなくては戦術とおりに動けないことは確かです。でも、戦術がなければ、せっかくの「精神面の強さ」は効率よく働かず空回りをする懸念があるのです。これら両方を揃えて、いや、持っている武器を全て使って戦いに挑むべきだと再確認しました。

さて、ここからが本題。

わたし達が、今、向き合っている「ガンという相手」。どう戦うか、どのように手なずけていくか・・・いかにわたし達が優位に立つか・・・やはり、戦略が必要なのです。
戦略を構築するには情報が強力な手助けとなります。そして、それらを冷静に迅速に分析することが必要だと考えています。どうでしょうか?インターネットにアクセスすれば、その向こうに広がる限りない情報の海に遭遇します。しかしながら、全ての情報を入手できるわけではありません。例えば、同じ分野での実体験を当事者の方々から聞くことも有益な情報を得られることでしょう。情報収集の機会は誰にでも平等であるはずですが、最近、その機会を奪う人達に遭遇しました。

あるフォーラムにおいてガン治療の保険適用外の治療法についての講演が予定されていたそうです。しかしながら、ある団体からの抗議を受け、それらのセッションは中止になったと伺いました。
つまり、情報を得る機会を一方的に反故にされたわけです。正直、とても驚きましたし、残念で仕方がありませんでした。また、同時に発信する責任をも痛感したのです。
クレームの趣旨は、「保険適用外はインチキ、科学的根拠がない、国が認めていない、そんなものを紹介するのか・・・国がイニシアティヴをとっている治験に参加し貢献するのがガン患者の正当な役目、受け入れられなければ会場に乗り込み抗議デモを行う」そうなのです。
施行された法律も無視、あまりにも無責任です。なぜなら、国が認めていない治療は存在せず、保険適用か適用外かにわかれているだけなのですよね。うーん、独裁国家の主権者のごとく、自分たちの考え及び方針と異なるだけで攻撃し、加えて「悪、インチキ、認められていない治療」といとも簡単に貶めるのか・・・と受け取ってしまいましたが、なにかとても辛い苦しい経験がこのようなラジカルな言動につながっているのかなとも思います。

ガン患者は、その家族は、今の状態を改善したいと強く願っています。たとえ話ですが、コーヒー1Lを毎食飲用すればガンが消滅する結果が出ている治療法があったとします。みなさん、どうなさいますか?よし、やってみよう!と思いますよね。
また、例えば、今までのデータから好ましい結果を伴っていない保険適用治療があるとします。可能性はゼロではないからトライ、でも、身体の機能がダメージをうけQOLが下がったとしたら・・・どうしましょうか?そのまま続けますか?それとも他の可能性を探しますか?ちなみにわたしは後者です。

わたし達は「生きるため」に「治療を受ける」のですよね。「治療を受ける」ために「生きている」のではありません。主役はわたし達です、治療ではないのです。

この考えは、提案された治療法を否定することを奨励しているのではなく、治療法、つまり戦術を選びたいというだけなのです。戦術の構築には情報が必要です、また分析する労力も必要です。医師と話し合うことも必要です。誰にも与えられている「知る権利」であり、やがては「知ったこと、理解したこと、発見したこと」を同じ病気と闘う人達と共有できるものではないかしら?と思うのです。それゆえ、わたし達は情報、経験を共有し、意見交換ができる患者会でありたいという信念に基づき、こつこつ活動を続けています。

情熱をもって取り組むことはとても素晴らしいです。熱意がなければ進む活力もわいてきません。突き進む時はどんどんいくべきです。しかしながら、一休みも有効なのです。戦術を理解していれば判断の基準が明確になるので、冷静になれるかもしれませんね。この戦術には「心のケア、心の育成」も含まれていることは言うまでもありません。持っている武器、使える武器、全てを動員し、わたし達はガンに向き合うのでしょう。ひとりで辛く苦しくなる時、重苦しさをシェアすれば軽くなります。
また、嬉しさ、喜びもシェアすれば倍以上になると思うのです。

シェアできる場、もみの木はそうなりたい。いや、そうあるべきだと強く思います。

 

患者の集い・モミの木
カウンセラー 相田 淳子

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